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「ごめんなさい」
一言だけ言ってはぐらかそうとしたが、存外男は食い下がってきた。
「じゃあ、来るまで俺らと飲もうよ」
来ないんでしょ?と見透かされている気がして苛ついた。そのにやけた馬面に水をかけてやりたい。
「こっちのテーブルにおいでよ」
もうひとりの男が背中に触れてきた。気持ち悪い。ここのマスターは客同士のやりとりには極力口を出さないが、さすがに助けを求めようとした時、入口の方から低い声がした。
「やあ、待たせたね」
声の主は、彫りの深い整った顔に、ネイビーブルーのスーツがよく似合う30代前半位の男性だった。顔立ちのせいなのか何なのか、目付きがすこぶる悪い。肩に届く程の長い黒髪がいやでも目を引く。そして、横の男達より頭二つ分は高い身長と、均整のとれた逞しい体躯。
こんないかつい人なら威圧を与えるのに言葉はいらないだろう。
どう見ても極道です。
本当にありがとうございました。
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