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満月の夜、向かい側のビルに立っている女性と目が合った。
腰まで伸びた黒い艶やかな髪。
丁寧に切り揃えられた前髪。
風になびいてふんわりとした白いワンピース。
綺麗。
一目見て、僕はそう思った。
日本顔の美人なのに、不思議と日本人形のような怖さは感じられなかった。
「どうして?」
ふいに、彼女が言った。
「どうしてそんなに見つめるの?」
無垢な瞳で問いかけられると言葉に詰まる。
まさか、”綺麗だったので”なんて口に出せない。
「つっ……月が、綺麗だな…って………」
誤魔化そうとしたのだが、逆に変なことを口走ってしまった。
彼女は首をかしげた。
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