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 彼は違いのわからない男だ。  とにかく私の変化に気付かない。  私が髪色を変えても、メイクを変えても、マニキュアを始めても、新しい服を着ても、これら全部を一気に変えてみても気付かない。    いやもしかして本当は気付いてるけど、口に出して言わないタイプなのかな?   こっちから訊いてみようか。 「ねえ、孝介(こうすけ)」 「ん、どうしたの麗花(れいか)」  私が彼の名前を呼ぶと、ソファでくつろぐ彼は切れ長の目をこちらに向けた。  そのまつ毛の長さはいつも羨ましい。 「今日の私、どこか変わってない?」  実は今日は美容院に行ってきて、髪色を変えたのだ。  光を集めるような、少し透明感のあるブラウン。  夏の晴れた日のデートに似合いそうで、とても気に入っていた。 「え、うーん」    彼は腕を組んで悩みながら、少しの時間を消費した。 「あ」  そう言って彼は私の頭を指差した。  わ、気付いた!   「ニキビできてる」  ええええええ。  確かに私も気になってたけど。  でも、なんでそんなとこばっか気付くのよ! 「いつもチョコばっかり食べてるから」 「いいの! これが私よ!」  やっぱり彼は気付かない。  いや気付いたけどそこじゃない。  私は不貞腐れて、先に寝た。
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