守りたい

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「前にフィルモールで麗花さんと彼氏さん、見かけたことがあるんですよ」 「え、そうなの?」  フィルモールとはこの辺りでは最大規模のショッピングモールだ。  有名ブランド店からお手頃価格の雑貨屋まで多様なお店が入っており、休日には人で賑わう。 「そうなんです。それでわたし、後ろから麗花さんたちを見つけて、声をかけようと思ったんですけど」  里紗ちゃんは箸を置く。 「二人で楽しそうに笑ってて、それがすっごく幸せそうで、声かけられなかったんですよね」  そして彼女は、いつもとは少し違う優しい笑顔を見せた。 「その時思ったんです。この幸せな景色、守りたいなあって」 「……ありがとう」  私は小袋を受け取りながら、胸を打つ気持ちをぐっと抑える。 「今度美味しいもの食べに行こうね」 「お洒落なお店、探しておきますね」
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