21人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
-1点
彼は違いのわからない男だ。
とにかく私の変化に気付かない。
私が髪色を変えても、メイクを変えても、マニキュアを始めても、新しい服を着ても、これら全部を一気に変えてみても気付かない。
いやもしかして本当は気付いてるけど、口に出して言わないタイプなのかな?
こっちから訊いてみようか。
「ねえ、孝介」
「ん、どうしたの麗花」
私が彼の名前を呼ぶと、ソファでくつろぐ彼は切れ長の目をこちらに向けた。
そのまつ毛の長さはいつも羨ましい。
「今日の私、どこか変わってない?」
実は今日は美容院に行ってきて、髪色を変えたのだ。
光を集めるような、少し透明感のあるブラウン。
夏の晴れた日のデートに似合いそうで、とても気に入っていた。
「え、うーん」
彼は腕を組んで悩みながら、少しの時間を消費した。
「あ」
そう言って彼は私の頭を指差した。
わ、気付いた!
「ニキビできてる」
ええええええ。
確かに私も気になってたけど。
でも、なんでそんなとこばっか気付くのよ!
「いつもチョコばっかり食べてるから」
「いいの! これが私よ!」
やっぱり彼は気付かない。
いや気付いたけどそこじゃない。
私は不貞腐れて、先に寝た。
最初のコメントを投稿しよう!