銀の鈴金の空

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銀の鈴金の空

 ただいま。  銀の鈴の錫杖がカチャンと鳴って声と気配。  玄関に。  母たる存在らは  はじかれたように玄関へ。  しかしそこには待ち焦がれた子供の姿はなくただ  花束があった。 『ありがとう』  の  メッセージカードと銀の鈴の添えられた花束。  筆跡はたしかに  愛しい我が子のもの。  そうね  空を見る  こんな良いものを母に贈れるなら  つらい目にはあってない  あの子  世界じゅうで  何人もの母が空を見あげた  空は澄んでいた  そして  愛しい唄声が聴こえていた  唄えおまえを  唄え愛にちがいない心を  想いは大地に種と根付き  いつか花を咲かせる  地上をいろどる  なつかしいその場所を  おまえの生きた場所を  また  鈴の音が聴こえる  また  空を見る  歌と唄と魂と花  私は生きました  ヒトとして  そして空へ帰ります。  地球に帰ります。  母の胸に抱かれたように  そのぬくもりでヒトを満たしたくて。
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