ひなた

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ひなた

 音がない夜歩いてた。  尾がない猫が歩いてた。  戸がない塀の上を歩いてた。  あげる鳴き声が、音を受け付けないデリケートな夜の空気を割っていた。 「へェ、かっこいい」  語りを聞き終えると、ポッキーをくわえたままの友が、イイ感じに愛くるしい笑顔をノートからあげ、自分に向けた。  ポッキーをふたりポキッとする。  もちろん唇で。  ちょっと前流行ったポッキーゲームあれみたいな。  みんなで悪ノリする。  はじける笑顔。  曹達水みたいに。  笑って、笑って、この世界に音が声が言葉があることが、嬉しくてしかたない自分がそこで、腹を抱え手をたたき、制服を着た学生と云うコピペしたみたいな生き物として、そこに居た。  そんな昼ひなかの、教室だった。
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