コと云うモノ

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コと云うモノ

 白む空が非現実だった  一瞬わからない  自分がなになのか  カーテンのむこうから白い光  新しい希望の朝の光  導かれた朝焼けが神々しく  色を運ぶ  そこかしこに金色  めでたき空気がはらはらと  お味噌汁の匂いに誘われ  階段を降りる  目玉焼きとウィンナーとごはんも  あとレタスのおひたし  一汁三菜の食卓についた  おいしい  噛みしめる味が現実だ  たった昨日までどこに私は居た?  よくわからない  ふと手を見た  右手てのひらにほくろ  左手小指にほくろ  なんだかなつかしい  この体  やっと返してもらえたんだ  検査も済んだんだ  さ、着替えて学校行こ  いつぶりの学校かもわからない  楽しそう  うきあしだつ手首に小さな枷  この国の者であるあかし  そう  こうやってこのごろの子供は  生きている。  玄関の外垣根のむこう電線の外ビルのむこう  そう、そこに空が  そしてそうして、ここに私が。
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