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うちしょくないしょく
レジ打ちをしている時間とは、お客様の観察が楽しい時間でもある。
今日もピッピやりながら見ていたお客様、ご年配のご夫婦ふたり連れ。
このバーコードハゲはイチキュッパかな、と、想像して楽しい。
しかもゼロのつかないいちばん安いイチキュッパ。
くす。
おもわず口もとがほころび、やべ、と、目の前の奥さんをチラ見した。
目があい、わかったようにうなずいてもらえた。
「外食だから一〇パーセントよね。国民の義務だわ」
ハゲがトイレに行った隙に、奥さんはぼそっと言った。
「え?」
また目と目があう。
瞬時に理解できた。
お買いあげいただいたのは内食の食材ばかり、あっても中食に相当するお惣菜。
それでも勘と経験で飲みこみ、会計のやりとりをスムーズにこなした。
あのハゲには奥さんでない外食があるんだ。
そうして奥さんも、もうハゲ亭主が内食じゃなくて中食ですらもなくて、外食あつかいなんだ。
あのね、性的ないただきますのお話でね。
おふたりの去る背中は仲睦まじい感じで、荷物はなんとハゲが持ってた。
それでもかい。
いつもどおりツッコみは脳内だけで入れて、さっさと次のお客様に接客スマイルを投げた。
「いらっしゃいませ、お待たせいたしました」
さァ、私を楽しませろお客様。
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