山口くんの平凡でない平凡な1日

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山口くんの平凡でない平凡な1日

 高校入学から5日目。平々凡々な日常を望んでいる俺の目の前に、波乱の予感を感じさせるモノが現れた。 「とも、どうかしたか?」  幼なじみのあっくんが、俺を振り返る。 「あっくん」  駐輪場に自転車を置き、下駄箱に向かう途中でいきなり立ち止まれば、どうかしたと思うよね。 「変な人達がいる」 「どこ?」 「そこ」 「危ないのか?」 「うーん……危険はないと思うけど……」  俺より10センチ以上背の高いあっくんが、顔を寄せてくる。自転車置き場で内緒話をする俺達を、ちらちらと見る人は多いけど、前の道を横切る白い着物の一団を気にする人はいない。  俺は、俺だけにしか見えない白い着物の一団が、危険なモノかどうかを見定めるため、目を凝らす。 「うん。嫌な感じはしない。でも、触りたくないから隙間を狙って通ろう」 「分かった」  ゆっくりと歩き出す俺に、あっくんは何げない感じを装いながら隣を歩いてくれる。  白い着物の一団は、外の壁から現れ体育館に消えて行く。その姿は少しぼやけていて、顔までは分からない。真っ直ぐ前を向き、一定の速さで滑るように歩いて行く。歩く人と人との間隔はさまざまで、くっ付きそうなほどの距離で歩いている人もいれば、少し離れている人もいる。俺はあっくんとゆっくり歩きながら、広めに開いている所を狙って通り過ぎた。ちらりと後ろを見るが、白い着物の一団に変わった様子はない。ほっと安堵の息を吐く。 「久しぶりじゃね?ともが何かを見るの」 「そうだね」 「昨日までは、何もなかったよな?」 「うん……」 『多分』という言葉は、声に出さなかった。  小さい時にばあちゃんにもらったお守りを、今でも持ち歩いているとは、幼なじみのあっくんにも恥ずかしくて言えない。  昨日まで見えていなかったモノが今日見えてしまった理由、それは多分、幼い頃から変なモノを見ていた俺を心配したばあちゃんがくれたお守りを、家に忘れてしまったからに違いない。
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