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At certain station
オレンジ色の日差しが窓越しに差し込んでくる。もう夕暮れ時、陽は落ちかけている。
桐生雅也は、空いている電車の座席に座っていた。ネクタイの襟元を緩め、ため息をついた。
雅也がぼんやりと差し込む光を見ていると、電車はある駅に到着した。ドアが開き、ひと際大きくオレンジの光が差し込んできた。
一人の客が電車に乗ってきた。
逆光で顔は見えないが、シルエットから長い髪の女性であることがわかった。
雅也はその女性に興味を持っていなかった。しかし、シルエットは雅也へと近づいてきた。そして、雅也の前に立った。
空いている電車にも関わらず、自分の前に立ったことを雅也は不審に思った。なんだろう? そう思って顔を上げるとわずかに雅也は目を見開いた。
「果耶……」
「お父さん」
高校の制服を身にまとった果耶が薄く微笑んだ。
雅也の前に立ったのは、娘の果耶だった。
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