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神様が梅雨明けを宣言した、という噂をてるてる坊主たちが耳にしたのは、その三日後のことである。オフィス内はわっと歓喜の声に溢れ、てるてる坊主たちは手を取り、互いの奮闘を讃え合った。
中には嬉し涙を流し過ぎて、あっという間に自身がしわくちゃになった者もいる始末である。
神様の発表した『梅雨明け宣言』は、もちろん地上においても大ニュースとなっている。
人々は傘に別れを告げ、スクランブル交差点をカラフルに彩る以前の光景はぱたりと見られなくなった。ある者はプールへと飛び出し、ある者は花火大会をはじめとする各種行事の進行に向けて、大忙しだ。災害などに対する危惧も、ひとまず安心に変わった。
どの人も、晴れやかな心で町へ出かけてゆく。尚、人々の心まで晴れに変えたのは、てるてる坊主の粋な計らいである。
この日、てるてる坊主たちは無事、英雄として返り咲いたのだった。
───そして、晩夏。
神様は、いち早く察知した。
てるてる坊主らの心の緩みを。
恥ずべき過去の再来を。
そこで、神様はただちにライバル社に手配した。
「頃合いだ。秋雨前線をひとつ、頼む」
Fin.
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