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 ちゃんとショップに足を運んで、目で見て選んで…そんな労力を、血も繋がらない親父の孫の為に使ってくれたってことだ。  内容も、おざなりに店員に丸投げしたんじゃないはずだ。丸投げするなら、ネットで充分だったはずだから。 「お義父さん、センスあるね」 「いや、親父のセンスなわけないわ」 「そう? …そうだね」  結婚式前に、一度3人で食事をした時の親父の出で立ちを思い出したんだろう。亜由は笑う。あの時の親父の格好は、ボウリングシャツにブラックジーンズ、ブーツ姿だった。こんな品のいい物を選ぶはずがないのは亜由にもわかる。 「じゃあ、しおんさんかな? おしゃれな人なんだろうなぁ」  ふと元の箱に目をやると、小さな封筒が入ってる。ブランドロゴが入っているから、ショップのサービス品なのだろう。手に取って開いてみると、商品の取り扱い説明と共に、カードが1枚入っている。  ラッピングと同様、白いカードには、ゴールドで縁飾りがプリントされていて、そこに手書きのメッセージが入っていた。  差し出すと、亜由は受け取って目を落とす。 「…優しい人だなぁ。会ってみたいな」
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