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亜由が笑う。親父はロックミュージシャンのくせに、穏やかで真面目だ。まだ二度しか会ってない亜由も、それを感じてくれたんだろう。
「ファンの若い子に手を出したっていうのは間違いないわね、今回も」
お袋も元々親父のバンドのファンだった。但し、他のメンバーの。その二人が何で結婚したのかは、未だに謎だ。
「お祝い出さなきゃね。お義父さんも言ってくれたらいいのに」
「照れくさかったんだろ。いつ?」
「先月。こないだ披露パーティーやったわよ」
「へぇ。で、いくつの人?」
「42。一回り下よ」
やるじゃん。って言っても、その世代の一回りは大したことないか。
「どんな人」
「すっごい美人で、しっかりしてて、明るくて性格のいい」
良さげな人だな。お袋がこんなに褒めるのは珍しい。親父にしては上出来だ。
「男の子」
一瞬、お袋が何を言ったのかわからなかった。聞き間違えなのか。
「えっ?」
「男の子。しおんくん。いい子よ」
一気に理解の範囲をオーバーする。親父が、男と、結婚?
そんなはずがない。今までも時々彼女ならいたわけだし、何よりお袋と結婚したから俺が存在する。親父はゲイじゃないはずだ。
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