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「あんたは頭が固いのよね。男の子なのが気に入らない?」
「気に入らないとは言わないよ」
俺が男と結婚するわけじゃない。親父が好きなようにしたらいい。けれど。
「ちゃんと会って、話して、認めてやんなさいよ」
「俺が認めるかどうかは関係ないだろ。親父の自由だ」
「バカね。関係あるわよ」
お袋は呆れたように、そう言う。いや、独立した人間なんだから、互いに相手の結婚や恋愛には、余程のことがない限り口を挟むもんじゃない。
「お父さんの葬式出す時、あんたは何をするの」
「何って、喪主だろ」
俺が一人息子で長男なんだから、当然だ。リアルに考えたことはないけど、そうしてる親父を見て来てる。
「それを務めるのは、これからはしおんくんよ。あんたはその次」
言われて気付く。彼らが事実婚である以上、俺が譲らなければ、その日に喪主を務めるのは俺だ。
今まで何年付き合ってきたのか、これから何年続くのかはわからない。でも、何事もなければ、その時まで親父の一番近くにいるのはしおんさんだ。
葬式だけじゃない。もし、入院することになったら。手術を受けることになったら。施設に入ることになったら。脳死状態になったら。
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