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「遺品です」 遺品、と言う言葉に心臓がちくりとした 私は浩壱さんから受け取った、見覚えのある浩司の携帯の画面を見る そこには、私たちがプールに行った時の写真が待ち受け画面になっていた 私が着替える前、浩司が一緒に撮ろうよと写真を撮ったやつだった 「浩司…」 思わず独り言ちた AV嬢なんて嘘じゃん、バカ もう、何で…? ぼろぼろと、気付いたら涙が溢れていた 嘘だっていってよ いつもみたいにさ、冗談だよって、言ってくれないの? 私は浩司の携帯を握りしめ、溢れてくる涙を抑えきれなかった 「私、心理学科がある大学に進学したいです 将来は、臨床心理士になりたいから」 高校三年になった私は、三者面談を行っていた 三者面談で、臨床心理士に成りたいと担任と親に告げると、親は訝しげな顔をして、担任に、臨床心理士のある心理学科の大学を卒業して将来は職につけるんですか?と言った 「まあ、臨床心理士になってねえ…就職先があるかはわからないけど…仕事には着けるんじゃないかと思いますけど…先生も臨床心理士がどう言う仕事だかあまりわからないからねえ…なんとも…」 担任は曖昧な返答を私達にした まあ、当たり前だ 担任は高校の教師であって、心理学科のある大学を卒業して職に着けるかまでなんて、専門家でもないし、まして就職の保証なんてどの大学出た所で本人次第なのだからわかりようがない 親はその返答が解せないのか、訝しげな表情は変わらなかった 帰り道 「あんた先生も心理学科の大学卒業して職に着けるかわからないって言ってるじゃない そんなんでその大学に本当に進学するわけ?」 と親に言われた 私は、親がなんと思おうが、担任がなんと言おうが、心理学科の大学に進学する意思は変わらなかった 「うん、進学したい 私は、助けを求める人がいるなら、救ってあげたいから」 「は?」 親は間の抜けた返答をした わからなくて、いい 私は救えなかった貴方の分まで、私が救える人を救ってあげたいのだ それは偽善でもなんでもない 正義感の為でもない 誰が為でもない 私は私が救われたいだけなんだ 自分本位でも構わない、今は その道を進んで、臨床心理士となり、救いを求める人を救ってあげることで 貴方に何もできなかった無力な自分も、救われるんじゃないかと思ったんだ 死に対して 人はいつになったら強くなれるんだろう でも 何度涙を流した所で きっと強くなんかなれない 神様はきっと 死ぬことに慣れない為に 強くさせないのだ "あなた"はもういない けど"あなた"は生まれ変わって、私の所にまた現れるかもしれない それは人の形をまたしているかもしれないし、別の形として現れるかもしれない それが縁であり "巡り合わせ"というものなのだそうだ 沢山の人と出会えば沢山の別れもある でも出会いは別れではなくて、別れは出会いでもあるんだ そう考えれば、少しはこの悲しい涙も 嬉しい涙に変われるのかな もう、もし…と思うのはやめた また会えるよね きっと
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