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通学の行き帰りとか電車の待ち時間とか、昼休みとか 最初は暇つぶしだと思ってたけど 気付いた時には 毎日浩司から連絡が来ていた 今日は何したよ、とか何してるって他愛ない一日の出来事を話してくる そうして いつの間にかそんな連絡を待ってる私がいたんだ 「ねえねえ、今日のあのテレビすごい面白かった、秋みた?」 「見てない!なに?」 浩司の話は楽しくて いや浩司の話が楽しいというか 浩司と話してることが楽しい 「なんか、さ 毎日連絡取って、電話して、私たち付き合ってるみたいだね!」 「…いや、付き合ってはないよ」 急に胸が締め付けられる感覚がした ギュッ…って 「あ、まあそうだよね… じゃあ、忙しいからまた」 一方的に電話を切った やっぱ言わなきゃよかった なんだよ 冗談だったのにさ いつもは冗談ばっかで、冗談で返す癖に なんでそういう時に限って …真面目に返すのかな そしたらこんな悲しい気持ちにならずに済むのにさあ ん? 悲しい気持ち…? なんでこんな気持ちになるんだろう なんで私は言わなきゃよかったって後悔してるんだろう 冗談で、言ったはずだったのに 私は知らず知らずのうちに 本当は、浩司の言葉から、そうだねって言葉を期待していたのかな? じゃなきゃ、こんな ズキズキ気持ちが荒むことなんか、傷つくことなんか、ないよね? 浩司には、好きな人がいるのに それなのに、私には他の人と違うって言われて期待して 色ボケしてたのかな? 友達なのに 私、バカみたい 暫くして、携帯が振動したのでディスプレイを見ると浩司からまた着信があった 「どしたの?」 「いや?さっき電話しててさ、急に秋の声のトーンが変わって電話切ったから気になって電話した」 「別に?そんなことないよ?気のせいじゃない?」 「そう? 付き合ってないよ、って言ったこと気にしてるんじゃないの?」 気付いてたんだ いや、そうだよね だって、 私は貴方に気にして欲しくてあからさまに不機嫌な態度を取った 卑しくて浅ましい女だから けど そんな事した自分が今更バカみたいだと思った 「え? 寧ろ気にしてたの?冗談で言ったんだけど!」 私は不自然にならないように笑い飛ばした 「…ふーん、そう」 浩司の声は納得してないような、腑に落ちないような返答だった それでいいの うん、これでいい 私は 貴方の前では、なんでも話せて、気を許せる、冗談を返したりツッコミを入れる、友達と普段接している感じと変わらない態度をこれからも取るんだ もう、一瞬でも 貴方を男と意識して、煩わすようなことはしないから だって、友達だもんね 真っ青な空にじっとりした熱気 8月に入り、夏も本番だ 私は夏休み前に、バイトの許可書を学校の方に提出していた それで許可が出たので、夏休みからアルバイトを始めたのだ 土日の週二アルバイト だけど、折角の夏休みなのでその間だけがっつりシフトインする事にした 早く仕事を覚えたかったのもある 町に唯一あるショッピングモールで、クレープとかタピオカを売っているデザート屋さん 私たち女子高生はもちろん、町のショッピングモールだから老若男女問わず多くの人が利用する 田舎なんか行くところがこのショッピングモール以外なにもないから、大抵週末は家族連れで賑わっている お客様が引っ切り無しに来るからそれを裁くのにてんてこ舞いだ 「はあ、疲れた…」 夕方、お客様のピークが過ぎ、上がる時間になった
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