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ロッカールームで着替えて、外に出た 「え…雨?」 夕立なのか、急に降ってきた感じで、みんな急ぎ足で駐車場に走ったり、店に走ってきたりしてる 最悪… なんでこんな帰る時にタイミング悪く降るかな… 傘持ってないし はあ、とため息を吐いた 「秋」 え? 聞き慣れた声 振り返った 「傘ある?」 職場の店長だった 「え…ない…です」 思わず反射的に返事をしたら、後ろ手にビニール傘が出てきた 「やっぱな じゃあ一緒に途中まで入ってく?」 「あ、ああ…はい、では」 「急に雨降ってきたよね 上の職場で雨降ってるって聞いたから持ってきたけど」 「そうですね…」 「多分、少ししたら止むと思うけど、これから俺すぐ本社戻らなきゃだから、駅まででいい?」 「え?」 「傘ないでしょ?車で駅まで送るよ、傘はもらっちゃっていいから」 「あ、いや、でも、悪いからいいですよ!」 「ああ、大丈夫、気にしないで、助手席乗って」 ええ… 「あー…じゃあ、ありがとうございます、すみませんお気遣いして頂いて」 「いいよ、気にしないで本社行く途中だから、雨降ってるしね」 店長は店長ではなく、本社の社員さんなんだと言っていた けど、人手不足で今回うちの店舗に何ヶ月か現場で働くことになったらしい いつもクローズって時間まで働いて、帰宅は深夜一時とか言ってたなあ 「店長、いつも遅くまで大変ですね 慣れない現場仕事だと余計疲れませんか?いつも目頭揉んでるから」 「え? ははっ 秋は良く見てんな! 大変だけど、疲れてはないよ、仕事は好きだからね なんか、最近メガネの調子悪いのか目がやたら疲れるんだよね」 そうやってまた目頭を揉んだ 「あっ!店長いいのありますよ!これ!」 そう言うと私はカバンから最近よく食べてるドライフルーツを出した 「プルーンなんですけど、ダイエットにいいって聞いて最近食べてるんです!確かCMで目にも効くとかやってたと思います!どうぞ!」 個包装されたひとつを渡した 「…多分目に効くのはブルーベリーだと思うよ」 あれ? 「でも、ありがとうな! 秋は仕事でもだけど、そーゆーちょっとしたとこ気が利くよな」 そんな事を言われるまで意識した事が無かった そうなのか…褒められたのかな… なんか、嬉しいかも… 「へへ、ありがとうございます…」 バイトが忙しく、そこから次に浩司に会ったのは二学期が始まって少し経った頃だった 私たちは恒例の公園に集合していた 「秋、付き合ってる人いるの?」 「へっ…?」 浩司の第一声はそんな言葉だった 「えっ、いや、な、なんでそんな話に…? 全然だけど… どしたいきなし…」 「夢で見た!」 「はあ~?なんだそりゃ…」 こういう、本当どうでもいいような、くだらない他愛ない話ばかりで、でも、そんな話は忙しない日常を少し忘れさせてくれる 「嘘、。 夏休み中、駅前で、男の車から秋が出てくんの見たから 楽しそうに話してたし付き合ってるやついたんだ、と思って」 えっ 「違う違う!付き合ってる人なんかいないし!あれはバイトしてる、そこの店長だから!」 言った後、なんでこんな弁解をしてるんだと我に返る と言うか… 店長が送ってくれた時、浩司見たって事よね?
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