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去って行った二人組の方を向いて立っている南雲。その背中は、いつもの何倍も頼もしく感じる。
「な、南雲……ありが」
お礼の言葉を言いかけたところで、南雲がクルっと振り向いた。
「大馬鹿ハチっ!うっかりにもほどがあるだろうが!」
振り向きざまに怒鳴られて、ひゅっと肩を竦める。
「俺が来るのがあと5分遅かったらどうしてたんだよ!」
頭ごなしに叱られても、反論の余地はない。
本当に南雲が来るのがあと5分遅かったら、私いったいどうなっちゃってたんだろう。
そう考えたら、さっきまでの恐怖が倍になって戻ってきて、また足が震え出した。
「ご、めん…なさい……」
謝罪の言葉が震える。
安堵と恐怖がない交ぜになった感情が、涙になって溢れ出す。ポロポロとこぼれ落ちたしずくが、足元のタイルにシミを作った。
「ハチ―――行くぞ」
突然私の手を掴んだ南雲に、ぐいぐいと引かれるようにその場を後にした。
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