あと5分!

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(どこに行くの?……南雲) ぐすんぐすんと鼻を鳴らしながら、私の手を引く彼の背中を見つめる。ずんずんと進んでいく彼は、黙ったまま。きっとまだ怒っている。 (当然よね……) 遅刻して、スマホも忘れて、挙句の果てに変な人に絡まれて。 たかが5分、されど5分。 5分違っていたら、きっと今頃二人で楽しく映画館でポップコーンでも食べていたはずなのに。 まったく違う結末を迎えたのは、まさにその『5分』のせいだった。 映画館の向きとは逆の、人通りが少ない通路。少し出っ張った柱の影まで来た時、南雲の足がピタリと止まった。 「な、南雲?」 こんな場所に来て何があるんだろう。恐る恐る声をかける。 もしかしたら、別れ話かもしれない。 そうだ。私のやらかし度合いにとうとう呆れ果てたんだ。付き合い出してまだ日も浅いし、別れるなら今のうちだと思われたのかも。 そのことが決定事項のように思われて、怖くなった。 もう一度ちゃんと謝ろう。謝って、次から気を付けるって言わなきゃ――― 「ごめんなさいっ」 「ごめんっ」 同時に発した言葉に固まった。 「なぐ、も?今なんて……」 「ごめん……」 (南雲が謝ってる………) いつも私をからかってばかりで、どんなに言い合いをしても謝られたことなんてなかったのに。 目の前の彼は今、私に向かって頭を下げていた。
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