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何を謝るんだろう。よく分からない。
ああ、そうか。
(『これ以上付き合えない。ごめん』ってことなんだ………)
「わかった………」
「ハチ……」
乾き始めていた瞳に、またじわりと水滴が集まり始める。
声を上げて泣き出したかったけれど、そんなことしたら南雲が困るだろう。別れたって私たちは同じ会社同じ部署で働く同期なのだ。これからも顔を合わせていかないといけない。
俯いて奥歯をぎゅっと噛み締めて、ごくんと唾を飲み込んでなんとか涙を堪えた。
「短い間だったけど楽しかったよ」
「ハチ?」
「月曜日からはまた同僚としてよろしく、ね」
「あのな、ハチ―――」
最後の「ね」が震えてしまったのに気付かれただろうか。
南雲が何か言う前に、この場を立ち去ろう、そう思ったのに―――
「人の話は最後まで聞けって。いっつも言ってんだろ―――奈菜」
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