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呼ばれた名前に顔を上げると、目が合った。
いつもは男らしく真っ直ぐ横に伸びた眉が、今は少し下がっている。
「怒鳴って悪かった」
(え、)
「怖い思いをしたのはお前だったのにな。他の男に触られてんの見たら、ついカッとなって……怖がらせて悪かった」
南雲の言葉に堪えたはずに涙が一気に盛り上がった。溜まったしずくが下瞼の淵ギリギリで何とか止まったその時。
「こうする方が先だったのに―――」
南雲の腕が私の体を抱きしめた。
「無事で良かった―――奈菜」
「っ、」
強く抱きすくめられて、両目から涙がボロボロとこぼれ落ちた。
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