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目的の駅のホームへ電車が着く。ドアの前でスタンバイしていた私は、ドアが開くと同時に飛び出すようにホームに降りて、人の波をぬって改札口を目指した。
駅構内では走れない。他の人にぶつからないように気を付けながら最速で歩行した。
改札を出て少し行くと、大きな時計が見えてくる。
分かりやすい目印のあるそこは待ち合わせに持ってこいで、待ち合わせだと思われる人達で溢れていた。
(南雲、どこ?)
きょろきょろと見まわすけれど、その姿が見当たらない。時計が見える範囲をうろうろと歩きながら、待ち合わせていた彼を探す。
(南雲もまだ来てないの?)
いや、そんなことない。
南雲はこれまで一度だって約束の時間に遅れたことはない。
仕事の時も、仕事が終わってご飯を食べに行く時も。
ギリギリになることはあるけれど、遅れることは今まで一度もなかった。
軽いように見えるけど、結構根は真面目な同期なのだ。
頭上にある大時計を見上げると、長い針は【3】を指している。
(急な用事でも出来たのかな?)
連絡しようにも手段がない。今頃部屋で鳴っているかもしれないスマホを思う。
(仕方ないよね。ここで待ってたらきっと来るよね……)
そう考えて、しばらくその場で待っていることにした。
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