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何度か見上げた大時計。長い針はもうすぐ【9】になろうとしている。
(足痛い………)
さっきからつま先がズキズキと痛む。履き慣れないヒールで全力疾走なんてするもんじゃない。おかげで立ちっ放しが地味に堪える。
だけど足の痛みなんかよりも、時間が経つにつれてじわじわと広がってくる不安のほうが私を苦しめた。
(待ち合わせ、ここで良かったよね?)
(今日はやっぱりダメになったって、スマホに連絡が入ってる?)
(どうしよう……もしかして怒って帰っちゃったの?)
悪い考えばかりが頭を巡り、不安ばかりが大きくなっていく。
じわじわと目頭が熱くなる。こんなところで泣いてもしょうがないのに。
(どうしよう……もしかしたら南雲に何かあったのかも―――)
とうとう不安が恐怖に変わった。その時―――
後ろからポンと肩を叩かれた。
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