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「なぐもっ!」
勢いよく振り向いた。
けれど、立っていたのは待ち人ではなくて―――
「おねえさん、どうしたの?迷子?」
二人組の若い男の子たち。
「一人?どこに行きたいの?俺たち案内するよ」
親切な言葉とは裏腹に、にやにやと笑っている。
「いえ、あの…大丈夫です……」
「遠慮しないでいいってば。ほら、俺たち困ってるヒト見ると放っておけないタイプだからさ」
「本当にだいじょうぶ…なんです……迷子じゃありません……」
「えー、じゃあなんで泣いてんの?あ?もしかして振られちゃった?」
余計なお世話だ。
そう思うけれど、今の私にはグサリと刺さる言葉だった。
それが態度に出ていたのか、二人組は「おおっ!あたり!」と嬉しそうに顔を見合わせている。
「ち、ちがいま」
「じゃあ、俺たちと遊ぼうぜ。おねえさんみたいに可愛い女の子を振った奴なんか、俺たちがすぐに忘れさせるからさ」
私の言葉なんて聞かずに、そう言った右のヤツ。
「結構です」と断ろうと思ったら、今度は左のヤツが私の腕を掴んだ。
「やっ、」
「いいだろ、どうせ相手は来ないんだし」
触れられたところからゾワゾワとした悪寒が走って、振りほどこうと腕を振ったけれどびくともしない。
震えそうになる足を踏ん張ろうとしたけれど、またしても細いヒールが仇となる。
引きずられるようにして二三歩よろめいたその時―――
「てめぇら―――触んじゃねぇよ」
背後から掛けられた声に、三人一斉に振り向いた。
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