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聞いたことのないどすの効いた低い声。男たちを睨みつける鋭い眼光。
待ち望んでいたハズの彼。それなのに、思わず私まで震えあがりそうになるほど、恐ろしいオーラが漂っていた。
「手ぇ離せよ」
掴まれていた手が離れていく。南雲が左のヤツの腕を掴んだからだ。
「イテテテテテッ―――」
南雲に腕を掴まれた彼は、顔を歪めて叫んだ。
右のヤツが「おい、何すんだよ」と伸ばした手を南雲は反対側の手でサッと払うとひらりとかわし、よろめいた右が、腕を掴まれていたはずの左とぶつかる。ぶつかり合った彼らは一瞬、何が起こったか分からないという顔をした。
あまりの早業に、私も何が起こったか分からなかった。ただ不快極まりない感触が無くなったこと、南雲が来てくれたことに心底安堵するだけ。
「こいつに気安く触んじゃねえ」
もう一度低く唸るように南雲が言うと、二人組はチッと舌打ちをして去って行った。
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