雨降らせ

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 雨降らせは俺を突き飛ばし女とは思えない足で下山し始めた。 俺はそれを必死の思いで追った、ただでさえ体に鞭打つ様にして来た三日間だ、そんな体で妖怪に追いつける訳が無い。それでも俺は雨音の中から何とか息遣いや足音を辿って転がる様に後を追った。  彷徨ったのは彼女に会う為だった、下山する道を見失っていた訳では無い。引き離されながらも俺はそれを辿った。  どれほど走り続けたろう、足が上がらなくなる頃に視界が開けていた。 山への入り口で雨降らせは立ち尽くしていた。 幾つも建った彼女が見た事の無い建築様式の建物、放置された耕作地、それは彼女が永遠に守ろうと覚悟した光景ではなくなっていたのだ。
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