1 君の待つところへ

3/39
2224人が本棚に入れています
本棚に追加
/362ページ
「ああ、愛也の仕事が終わってから会うよ」 愛也は、都内にあるインテリアショップで、 社員として働いていて。 仕事終わりに俺のマンションに来る予定だ。 前回会ったのは撮影で帰国した以来だから、 半年ぶりの再会となる。 「それがいいと思うわ。 溜まった疲れをオフで癒してもらいなさい。 口では元気って言ってても顔に出てるわよ」 「え?」 「目の下に少しクマができてるし顔色も良く ないし。 向こうでちゃんと食べて睡眠とってたの?」 ………。 「あー、しばらく怪しかったかもしれない。 帰国の手続きやら引っ越し準備やらしつつ、 最近は、メールで打ち合わせもしてたから。 後回しだったかな……」 我ながら言い訳満載の言動に苦笑を漏らす。 「全く」 はあー。 心地よい洋楽が流れる車内に大きなため息が 響いた。 「やっぱり直生には愛也ちゃんがいないと、 だめね。 こっちではしっかり見張ってもらわなきゃ」 一人で、納得したように言いきる大嶋さん。 愛也の話題が続いたところで俺は口を開く。 「近々、社長と大嶋さんに時間作ってもらい たいんだけどいいかな」 「何?」 「フランスに行く前に一度話したんだけど、 愛也と、来年には籍を入れたいと思ってて。 仕事で必要な段取りとか公表する時期とか、 大まかに話したいから」 「あっ、そうねそうね。 じゃあ、帰ってスケジュールを見ておくわ。 社長とは明日会うから折を見て伝えるわね」 「うん、お願いします」 会話が一段落したタイミングで手を動かし、 愛也宛のメールを作る。
/362ページ

最初のコメントを投稿しよう!