8 至福の贈り物

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と述べ、俺にほほえむ。 雅之とは今のマンションのオーナーであり、 不動産会社の社長を務めている母親の弟だ。 新居を探すなら親族のよしみで融通が効く、 という意味なのだろう。 もちろんありがたいが。 「一緒に住むのは11月に結婚を公表してか らってことになってて。 それまではだめなんだ」 「あら、そうだったの。 それなら仕方ないわね」 「公表してしばらくしたらそうするつもり。 その時はお願いするよ」 「ええ、雅之も喜ぶわ」 そう笑った母親は温かいお茶を飲んでから、 思い出したように言う。 「あっ、二人の入籍祝い何がいいかしらね」 「まだ、今からだから。 そんな気を遣わないで」 「あら。 一生に一度の出来事よ。 親としては祝いたいの。 車でも、家財道具一式でも構わないから遠慮 せず言ってちょうだい」 案の定、母親から豪華なワードが出てくる。 きっと父親との会話の中で出たに違いない。 けれど。 車は今乗っている車種がまだまだ乗れるし、 新居で使うインテリアは二人で買いたいし。 「気持ちだけもらうよ。 お互い、仕事してるし」
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