9 HAPPY END

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「立っていられない?」 人差し指が唇を撫でる束の間に尋ねられて、 こくり、と素直に頷く。 シチュエーションが感度を上げているのか。 私の膝から下はすっかり脱力しかけていて、 腰を抱かれていなければ崩れ落ちそうな程。 「わっ」 その時、隙だらけの体がふわっと宙に浮く。 横に抱き上げられ向かう先は大きなベッド。 予感というより確信を得て肩に頭を乗せた、 それとほぼ同時だった。 「え?」 革靴の足元がベッドの横を通り過ぎたから、 驚いて。 不思議に思いながら顔を上げようとしたら、 広々としたリビング兼ベッドルームを出て、 長い廊下を歩いていく。 ………。 もしや。 「シャワー付き合って」 直生が、妖艶な笑みを浮かべてそう述べる。 これは、仕方ないよね。 というのも私はホワイトデーの夜のように、 すでに手配されていたエステやヘアメイクを 受けて、極めつけに白いワンピースでドレス アップさせてもらった。 けれど、直生は撮影時間が推してしまって。 予定より遅くホテルに到着することになり、 注文していたルームサービスに間に合わせる 為には、誕生日を祝う準備を完遂するには、 自らはスーツに着替える程度しかできなかっ たのだ。
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