9 HAPPY END

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忙しいのに今日の為にそこまでしてくれた。 なにより入籍した夜だ。 直生を一人にしたくないと思ったというか。 こんな可愛いわがままなら聞いてあげたい。 「はい」 頷いて、肩に抱きつく。 爽やかな香水の香りがふわりと鼻を掠めた。 この後、シャワーを浴びたら落ちちゃうな。 今の内に堪能しようと首筋に顔を寄せれば、 おでこの上の辺りに唇の感触が降ってきた。 大好き。 直生になら何をされても構わないと思える。 私の全部を委ねられる。 そうして腕の中で密かに酔いしれていたら、 広いバスルームに着く。 十分なスペースをもうけた洗面所とガラスで 仕切り、優雅さと高級感たっぷりの空間は、 一体何畳あるんだろう。 などと圧倒されているとそこに下ろされて、 前から回った手がワンピースのファスナーを 下ろす。 二人でシャワーを浴びてベッドに移ったら、 いよいよ夫婦になって初めての夜が始まる。 そう思っていたけれど。 数分後、自分は甘かったと思い知らされる。 「あっ」 熱気が立ち込めるバスルームに喘ぎが響く。 シャワーを浴び終わったのはさっきのこと。 現在は、モノトーンの壁を背に立ったまま、 真正面にいる直生によって溶かされていた。
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