2292人が本棚に入れています
本棚に追加
固く漲った熱はスローなペースを崩さずに、
ゆるり、ゆるりと緩い動きで奥を刺激する。
容赦なく穿つような激しさはどこにもない。
あくまでもゆっくりとした行為が維持され、
そうなるとこちらはもどかしさすら覚える。
「んん、あ……、あっ」
場所が、寝室じゃなくバスルームだからか。
吐息も、混ざりあう音も何倍も生々しくて、
聴覚は、侵されていく。
はあっ、と吐き出された息を首筋に浴びる。
耳の凹凸に沿うように舌でなぞり舐められ、
快感を捉えた体はぞわぞわと震え上がった。
この時、私の腰を掴んでいる手の力が増す。
かと思えば右手が汗だくの背中に回されて、
まるで、もっとおいでという風にさらに密着
させる。
言葉で、直接聞くのも嬉しいものだけれど。
行動の一つ一つが『好きだよ』『愛してる』
と告げているみたいで。
「愛也。
やっと、俺だけの……」
直生が肩越しに漏らした呟きは掠れていて。
きゅう、と切なくなる。
こんなにも入籍の日を。
自分を、渇望してくれていたのだと実感し、
すると、言い表せられない感情が押し寄せ、
自然と涙が一粒流れる。
最初のコメントを投稿しよう!