9 HAPPY END

12/40
前へ
/362ページ
次へ
思えば。 プロポーズとこの婚約指輪をもらってから、 直生が、再び活動拠点を日本に戻すことを、 長く心待ちにしていた。 それは、早く結婚したかったからじゃない。 距離にも時差にも邪魔されず会える日々を、 愛する人の側にいられる当たり前の時間を、 また送りたかったから。 直生の夢は応援したい。 いつかのその日まで待つとも決めたけれど、 5年は途方もない期間。 だから。 今日という日を1日も早く迎えたかったのは きっと、帰国を待ち続ける自分のほうだと、 ずっとそう思っていた。 けれど、将来を誓った口約束だけじゃなく、 入籍という明確な証で二人が結ばれることを 誰より求め願っていたのは直生だったのだ。 自分だけのものになる。 そんな、激情にも似た切なく深い独占欲は、 今この瞬間も示されて。 「ああ、はあっ、ぁん」 入口を、浅く擦られて最奥を緩く突かれて、 甘えるように絡みつく。 決して、速くも激しくもない優しい交わり。 それによりじっくりと私は高められていき、 重なった腰が揺らめく。 「ここ、気持ちいい?」 直生が、正面でこちらを見下ろして尋ねる。 恥ずかしいけれど顔を隠すこともできない。 力なく、小さく頷いた。
/362ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2292人が本棚に入れています
本棚に追加