9 HAPPY END

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これは恥ずかし過ぎる。 知らず知らずぽわんと見つめていたようだ。 中火だったからか幸いフライパンの玉ねぎは 無事で。 気を取り直すと手を動かして手早く炒める。 豚肉は火を通してある。 玉ねぎがしんなりしたらここにまた戻して、 煮詰めて出来上がりだ。 見ると、サラダはトマトも盛り付けられて、 すでに、完成していて。 お腹を空かせた直生を待たせないようにしな きゃと、私は少しペースアップして進めた。 21時。 夕食後、ソファに座っていつもみたいに映画 鑑賞中、なのだけれど。 「あの」 「何?」 「その、くすぐったくて集中できないです、 映画に」 「うん、もうちょっと」 そう言うと髪をまとめている私のうなじに、 静かに唇を置いていく。 というのも今は背後から緩く抱きしめられ、 まったりどころかいちゃいちゃの時間になっ ていた。 今月以降モデルの仕事がすごく忙しくなり、 実は3週間ぶりの逢瀬。 新婚で、いわゆる蜜月の時期に会えなかった からか、今夜は帰宅後もすぐに唇を奪われ、 膝が立たなくなるまで溶かされたのだった。 思えば、入籍してから何もかも濃くなって。 激しく抱かれて意識を失った夜が何度となく あった。 全ては、愛情表現だと分かっているけれど。 いくら新婚だからって会う度にこんなこと、 いいのだろうかと自問自答してしまうのだ。
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