9 HAPPY END

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「ああ」 意味を理解した直生は微笑を浮かべながら、 頷くと。 今度は、それを苦笑に変えつつこう言った。 「ここしばらくごめん。 籍を入れてからずっと歯止めが利かなくて。 愛也に、無茶をさせて」 大きな手のひらが熱を持つ頬に添えられる。 心から申し訳なく思っていることが届いて、 私は自然と首を振った。 「その、いつもより体はしんどかったけど、 あんな風に愛してもらえて嬉しかったから。 ただこれからは時々優しくして欲しいです」 「うん、……約束する」 穏やかな表情でそう言った直生はその手で、 そっと頭を撫でてくる。 澄んだ瞳は言葉の代わりに『愛おしい』と、 深い慕情を語っていた。 「愛也が『ちゃんと大事にされてる』って、 そう思えるように抱く。 誓うよ」 ふいに、広い肩に触れていた左手がとられ、 直生が指を絡めていく。 この言動だけでもう十分ジンとしちゃって。 左手に、ほんのわずかに力を込めて応えた。 この夜。 直生は、言葉通り私を大事に抱いてくれた。 指先も、唇もうっとりするくらい優しくて、 なのに、弱いところを捉えて止まないから、 結局は、あまりの気持ちよさに気を失って、 眠りに落ちてしまった。
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