9 HAPPY END

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「ふふ。 赤くなって可愛らしい。 直生が、一筋になってしまうのも分かるわ」 入籍後、2回目の訪問に訪れた息子夫婦を、 ほほえましく思うあまりの発言なのだろう。 けれど、お義母さんとなるとたまらなくて。 俯きがちになって視線を彷徨わせていたら、 直生が、こう切り出す。 「俺は、構わないけど。 愛也は真面目でそういうノリが苦手だから、 もう少し控えてあげて」 それは、息子だからこそ言えるコメントで。 それでいて私のことも分かってくれていて、 さりげない優しさにも雰囲気を悪くしない大 人な対応にも感激する。 「あら、ごめんなさい。 私ったらつい嬉しくて。 これから気をつけるわ」 悪気はなかったらしいお義母さんは謝ると。 「それで新居は都内のどの辺りにするの?」 話題を、明るい口調で切り替えたのだった。 17時。 「愛也、今日はごめん」 車を走らせて間もなく。 運転席でハンドルを握る直生がそう述べる。 日が暮れて薄暗い窓の外を眺めていた私は、 そちらを向き聞き返す。 「え?」 「母さんがあれこれ言ったり聞いたりして、 反応に困っただろうし。 大丈夫? ちょっと疲れてない?」
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