9 HAPPY END

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入籍日からはや3ヵ月。 夫婦になってまだそれだけしか経っていない けれど。 直生は、その間にも少しずつ変化していて、 夫としてできることをしようという努力が、 言動から伝わってくる。 だからこそ自分も妻の役割を果たしたいし、 良い奥さんになりたい。 二人で、手探りしながらゆっくりと家族にな っていけたらなと思う。 そんな風に馳せていたら信号は青に変わり、 再び走り出していく車。 今日は、直生のマンションで夕食を作って、 そのまま泊まる予定だ。 お風呂に入ったらちょっと甘えちゃおうか。 車内に流れる心地よい洋楽に耳を傾けつつ、 そうして家路についた。 18時。 「ふー、寒かった……」 帰宅後、コートを脱ぐとキッチンに向かう。 もちろんこれから夕食の準備もするけれど、 まずは、体を暖めたい。 電気ポットで二人分のお湯を沸かすその間、 戸棚からマグカップとティーパックを出して いると、クローゼットにいた直生が現れて、 キッチンにやって来た。 この日着ていたのは黒いニットとパンツ姿。 職業柄、シンプルな格好がとても絵になる。 「どれで淹れますか?」 「俺は、ほうじ茶かな」 「はい」 ティーパックを入れたカップにお湯を注ぐ。 ふわり、と香ばしい香りがキッチンに漂い、 身も心もほっこりした。 「愛也、どれにする?」 「緑茶でお願いします」 直生が、個包装を開けお茶を淹れてくれる。 何気ない日常がこんなに幸せに思えるのは、 やっぱり新婚パワーのおかげなのだろうか。
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