9 HAPPY END

29/40
前へ
/362ページ
次へ
「ふふ、楽しみですね」 この部屋で期間限定の生活が送れることも。 春には、新居で二人の生活が始まることも。 そして、来秋には待ち望んだ念願の結婚式。 きっと、新居探しや結婚式は準備することや 決めなきゃならないことがたくさんあって、 実際は、楽しいばかりじゃないだろうけど、 直生とならそれも一緒に乗り越えていける。 心から、そう思うのだ。 「ああ」 直生は、腕にそっと力を込めてから応える。 まだもう少しこうしていたいと思うけれど、 そろそろ夕食の支度にも取りかからないと。 「ご飯の準備しますね」 今夜は、チーズをトッピングしたオムライス で締めくくるトマト鍋。 まずは野菜の下ごしらえから始めようかな。 「俺も、一緒にやるよ」 するり、と抱擁を解いた直生は横に来ると、 手を洗いタオルで拭く。 気持ちは嬉しいけれど。 「早朝から撮影が続いて疲れてるでしょう。 向こうでテレビでも見て待っててください」 ここ最近のスケジュールを聞いていた私は、 ゆっくりして欲しくて。 そう言いつつ見上げるとかがんだ直生と目が 合って、唇を奪われる。 「俺は、愛也の側がなによりの癒しだから、 もうちょっと居させて。 それに、今は二人で新婚気分を味わいたい」 指先で頬に触れられて。 淡い色香が宿った瞳に間近で見下ろされて、 知らず知らず赤面する。
/362ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2289人が本棚に入れています
本棚に追加