9 HAPPY END

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23時。 「愛也、……大丈夫?」 果てて、シーツに背を反らす姿を見下ろし、 直生が、優しく髪を撫でて問いかけてくる。 「……大丈夫……です」 高められた熱がじんわりと涙になっていく。 指と唇でくまなく愛撫され上り詰めた私は、 息も絶え絶えに答えた。 入浴後、ボディクリームで保湿した肌には、 汗が浮かび光っている。 今夜の為に新調したランジェリーは床に落と されて、開かされた脚の間には直生がいて、 されるがままの状況だ。 「ちょっと待っててね」 色っぽく微笑すると私のおでこに口づけて、 右手を、ベッドの脇にあるチェストのほうへ 伸ばす。 そして、抱き合う時は欠かさず纏うそれを、 持ったまま口を開いた。 「実は。 来年の誕生日にお願いしたいことがあって。 ……言ってもいいかな」 「え?」 1年も、先のことを今? プレゼントのリクエストにしては早いなと、 溶けた意識でぼんやりと不思議に思った時。 「次の誕生日はこれを着けないで抱きたい」 「……」 初めて耳にしたからか。 それがどういう意味なのかすぐ理解できず、 思考が、ストップする。 ………。 待って。 まさか、それって……、 「二人の家族が欲しい」 今度は、はっきりと明確に告げられる言葉。 いつか、家族は欲しいと話し合ってはいた。 だから、結婚式を挙げてしばらくしたらと、 自然に『そろそろ』となっていくのかもと、 気長に構えていたから。 このタイミングでなんて思ってもみなくて。
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