9 HAPPY END

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「まだ、先のことをこうして話したのには、 いくつか理由があって。 この1年は二人きりの生活を一緒に楽しもう ねって、あらためてちゃんと言いたかった」 温かい手のひらで頬をそっと包み込まれる。 ふいうちに告げられ驚きが隠せないけれど。 自分も『いつかは』と望んでいたのだから、 嬉しくないわけがない。 「俺は、なによりも大事なのは愛也だから。 ゆっくり時間をかけて勉強したり準備して、 子供を作ることに向かいたいって思ってる」 さっきの言動の真意を穏やかに述べる直生。 まだ先のことを今日打ち明けてくれたのは、 誕生日で節目だったこともあるだろうけど。 示された時期はもう結婚式を挙げた後だし、 新婚生活も二人で十分に満喫できた頃だし、 子供を作るならタイミングかもしれないと、 見計らってくれたのだ。 これが、1年の猶予をもうけた経緯の事実。 「はい」 そんなにも考えていてくれたのだと思うと、 ジーンと胸を打たれて。 「私も、直生との大切な家族が欲しいです」 そうして腕を伸ばして広い背中へ抱きつく。 「……大好きです……」 ほとばしる想いを込めながら耳元で告げる。 それでも足りなかった。 どんな言葉であっても当てはまらない程に、 心の底から溢れている。
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