9 HAPPY END

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「愛也の好きそうなお土産買ってくるから。 お留守番して待ってて」 ふんわりと笑った顔が近づくと傾けられて、 優しく、唇を食まれる。 『明日から1週間も顔を見れなくなるから、 今日は愛也にたくさん触れたい』と言われ、 昨夜も、意識を無くすまで愛でられた私は、 腰に手を回され軽く絡め取られただけでも、 お腹の下が切なく疼く。 「んん」 貪られた口元から熱い吐息がこぼれ落ちる。 「俺の奥さんは無自覚で誘惑するから困る」 とろん、とする様子を見て微笑した直生は、 しっとりと濡れた唇を親指のひらで撫でて、 最後にもう一度啄んだ。 「じゃあ行ってくるよ」 ガチャ。 広い背中が向けられドアの向こうへ消える。 けれどもう寂しくない。 これからはあなたがどこへ行ったとしても、 ここで、その帰りを指折り待ちわびるから。 それが、私にとってどれだけ幸せなことか。 「よし。 掃除の続きしようかな」 今日は朝から天気が良くて絶好の家事日和。 仕事がある日はあれもこれもこなせない分、 徹底的にやっちゃおう。 そうだ。 来週の木曜日は好物のハンバーグを作って、 帰りを、待っていよう。 ふとそう浮かべながら。 心から愛する夫の帰国を楽しみにしながら、 思いを馳せたのだった。 ―終わり―
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