それってオフサイドでしょ?

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「湊さん。」 「ん?」 「私寝相があまりよくないから お墓は広めにして下さいね。」 意味の分からない告白に、意味の分からない答えをしてみた。すると湊さんは少し考えたあと、「わかった」と返事をした。 わかるなよ。 私がそう思って笑っていると、湊さんは頬を赤くしたまま私の手を握って、いつしか止まっていた足を進め始めた。 「湊さん。」 「はい。」 また私の生活には、きっと新しい"いつも通り"が始まる。 湊さんが私を好きになってくれて、私も湊さんが大好きで。それは今はとても新鮮で美しくみえることかもしれないけど、いつかはいつも通りになって当たり前になってしまうのかもしれない。 「私、湊さんが好きです。」 でも当たり前だと思っていることこそ、幸せで愛おしいものなんだ。 お母さんが死んでそれを一番わかっているつもりの私は、沈んでいく夕陽を見ながら今の気持ちを絶対に忘れないでおこうと心に誓った。 素直に私が「好き」言うと、湊さんはもっと顔を赤くして照れていた。それだけで照れてしまう30歳がすごくかわいく見えてしまって、私はクスクスと笑った。 後ろでは相変わらず友美と田村さんが騒いでいる声が聞こえて、デートに誘われたときみたいに告白まで公開していることに気づいて、急に私も恥ずかしくなり始めた。 「湊さん。」 「ん?」 「これって、オフサイドですよね?」 湊さんは私をいつ好きになってくれたのだろう。告白される前にプロポーズみたいなことを言われて、こんな展開を予想もしていなかった私は、正直とても動揺していた。 でも好きになった順番とか、告白とプロポーズの順序とか、そんなものはどうでもよかった。今私の右手から伝わってくる暖かい湊さんの体温が流れ込んできて、それが心までじんわりとしみわたって幸せな気持ちになっているのが、今の私のすべてだった。 これからだって湊さんは私の予想の斜め上を行くことを言うかもしれない。小さいころに思い描いていたシンデレラストーリーみたいにだって、進まないかもしれない。 でもそんなことはどうでもいい。 だって恋愛オフサイドは、反則でもなんでもないんだから。 私がそんなことを考えているときに、オフサイドだと言われて以来ずっと考え込んでいた湊さんが「フットサルにはオフサイドはないから」と、唐突に言った。 全然意味は分からなかったけど、でも私は暖かい気持ちのまま「そうですね」と答えた。 to be continued,,,
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