私はサッカーが嫌いだ

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私はサッカーが嫌いだ

大学3年生の時、お母さんが死んだ。ある日突然脳卒中で倒れて、そのままあっさりと逝ってしまった。 私のお父さんは陽気なアメリカ人で、お父さんがいるだけで家の中が明るかった。お父さんにつられて私もよく笑っていたし、私は明るくて優しいお父さんが本当に大好きだった。 でもお父さんは、私が中学生になったくらいでいなくなった。突然の出来事だった。 お母さんはどこにいるのかも何をしているのかもわからない、と言っていた。私は生まれも育ちも日本だし、名前だって日本名なのに、顔はどうみても純日本人ではなかった。そのせいで小さい頃はよくからかわれたし、お父さんがいなくなってからはもっともっと苦労してきた。 なのに今度はお母さんが死んだ。 保険とか遺産とか、そんなものはほとんど入ってこなくて、当然お父さんが帰ってくることもなかった。 そしてその上、私には弟がいる。 私が大学3年生の時に彼は小学5年生だったから、私は弟を大人まで育て上げるために、働かざるを得なくなった。 そして結局、一生懸命勉強して入った大学を辞めることになった。 幸いなことに、私は英語が少し扱えた。中学生までは家で英語を話して過ごしていたし、三つ子の魂百までとはよく言ったもので、あまり話さなくても小さいころに覚えた英語は体のどこかに染みついていた。 だから大学中退で20歳という年齢でも、それなりに働き口はあった。必要としてもらえるのなら、どこにだって入社して何の仕事だってした。 それでも弟を養っていくっていうのは本当に大変だった。時には昼の仕事の後、夜の街で働いたこともあったし、とにかくがむしゃらに色々な仕事を掛け持ちしながら必死で働いた。 「いってきま~す。」 「はい、頑張って。」 そして弟は、サッカーがとても上手かった。 彼はまだ小学生だった頃から、中学生のチームから声がかかったり、私でも聞いたことのあるようなJリーグのチームに呼ばれたりもしていたし、サッカー雑誌みたいなものに何度も取り上げられたこともあった。 お母さんが死んだとき、彼はサッカーをやめるといったけど、私はそれを止めた。 弟には私では掴み取れない未来があることが、その時の私でもしっかりと理解できたから。そして弟が抱いているその夢を、大人のせいで諦めさせるわけにはいけないと、20歳ながらに私はそう思った。
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