鈴の男気

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鈴の男気(すずのおとこぎ) a6d17bc2-03a6-4136-9d2a-632d3b416234 鈴の男気(すずのおとこぎ)1                        制作:kaze to kumo club -序章- 「なんで、あたいが……こんな目に合うんだよ……?」  背中にボーガンの矢を受けて、血を流している一匹のメス猫が…… 西南高等学校の校門を抜けて入り込んだのは、 もう……夕方の6時を越えようとした頃だった。  大量の血液を流して、もうろうとする灰色ボス猫、鈴(すず)は学校の壁をつたうように、花壇のすき間を進んでいる。  足元がおぼつかず、今にも倒れそうな彼女は毒ずく。 「だから、人間は大嫌いなんだ! 遊びで……あたいら、猫を殺しやがる。 許せねえ〜。あのクソガキどもが……! ぜーてっー、許せねえぞ!」  哀れな彼女を狙い、いたぶり、串刺しにしようとしたのは……どこにでもいる塾帰りの中学生どもだった。  買ったばかりのボーガンをみんなの前で自慢したくて、無神経な悪魔たちは、適当な的を探していたのだ。  たまたま、そこに……エサをあさりに来ていた……勝気な猫、鈴(すず)が出くわしてしまった。  当然、鈴(すず)も負けてはいない。 始めは鋭敏な運動神経を生かして、ガキどもを翻弄させるぐらいだ。  飛んでくるボーガンの矢を紙一重で避けながら、親分格のクソガキの鼻先を 得意の鋭い爪で切り裂いてやったほどだった。  けれど……何分にも、多勢に無勢。 5人がかりで囲まれて、鈴は……ついに矢の一本を……背中に食らってしまったのだ。    そんな鈴の姿を見て、ここぞとばかりに笑い転げる小悪魔ども。信じられないひつこさで追って来る。鈴も必死だった。  1時間ほどの追跡劇後、何とか巻いた鈴は……ここまで逃げ伸びた。 だが、もはや体力の限界を超え、長く続く花壇の途中で力尽きてしまう。 「クソ〜、身体に力が入らねえ〜。めっ、目も……かすむ……。終わりかよ、 こんな所で……? 冴えねえ……最後だなあ〜」    苦しげな息を吐きながら、不運なメス猫は空を仰ぐ。  夕日が沈み、赤く染まった大気が……何気に鈴の最後を見届けようとしているみたいだった。 「ああ〜あ〜、クソみていな一生だったが……まあ〜良かったぜ。神様よ!」  ニヒルに微笑む鈴の顔は……猫にしておくには惜しいほどの……男気(おとこぎ)があった。 「さすがに……疲れたぜ。あばよ! あたいの……」    つぶやきながら目を閉じようしていた鈴は、天上に異様に物体を発見する。 大きな丸い影?……いや、尻?……そうだ! 人間の尻だ!  落ちて来る巨大な物体は……人間の……女の子の……尻……? 鈴は苦笑する。 「おいおい、冗談だろ? あたいの最後は……尻に潰されるのかよ? アホらしい……」  どうしようもない笑いが、鈴の表情を変えていた。 1p
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