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第四章 ~開花する淫蕩の血~
カーテンの隙間から差し込む日の光で、アイヴィーは目を覚ました。
常に暗雲に覆われている魔界と違い、人間界の朝は明るくまぶしい。
元々、寝起きはあまり良くないアイヴィーだが、今日は体がだるいせいでいつも以上に起きるのが辛かった。
こうなった原因は、何度もディランに抱かれたからである。
当の本人はすでに起きたらしく、寝室のどこにも姿が見当たらない。
目覚めてすぐに、ディランの顔を見たかっただけに、隣にいないのは寂しかった。
せめてぬくもりだけでも感じようと、アイヴィーは再びベッドに身を横たえる。
(おじ様、今夜も抱いて下さらないかしら……)
できれば毎晩、身も心も蕩けるような快感を与えてほしい。そしてあの猛々しい剛直で突いて最奥に雄の精を注いでほしい。
淫らな願望はそのまま疼きとなって、体に流れる淫蕩の血がざわめいた。
(私ったら、朝から何てはしたないことを考えているの……!)
アイヴィーはそんな自分自身を恥じるが、一度催した欲情は止まらずむしろ強まるばかりである。
このままでは埒が明かない。一刻も早く疼きを抑えようと、彼女は自慰行為を始めた。
「は、あぁ……」
ディランに触れられていると妄想しながら、乳首や陰核を何度も弄っていく。
「あぁん、おじ様……もっと……」
鼻に抜けるような甘い声を上げた時である。
運悪くディランが部屋に入ってきて、ばっちり目が合ってしまった。
「目覚めて早々、俺に自慰行為を見せつけてくるとは、さすがは淫魔だな」
「ち、違うの! これは……その――」
自慰行為を目撃されたことで、アイヴィーはすっかり動揺してしどろもどろになる。
「別に否定することないだろう。せっかくだから、俺の裸を見ながらやるか?」
ディランはベッドへ近づくなりバスローブを脱いだ。
バスローブの下は何も着ておらず、当然ながら局部にある股間のものも丸見えである。
「結構です!」
下肢の中心に目が行きそうになりながらも、アイヴィーは即座に断った。
「嘘が下手だな。やりたくてたまらないって、顔に出てるぜ」
「そ、そんなこと――」
いくら淫魔のアイヴィーでも、自慰行為をしているところなど見られたくない。その相手がディランなら尚更だ。
「俺が見たいと言ってもやってくれないのか? 昨夜、望み通り抱いてやったというのに、何てつれないんだ……」
ディランはわざとらしく肩を落としてみせる。どうやら無理矢理押し倒されて体を弄られたことを、まだ根に持っているらしい。
昨夜のことを負い目に感じていたアイヴィーは、彼の要求を拒否することなどできなかった。
羞恥心を抱きつつも、彼女はおずおずと手淫を再開する。
「もっと足を開け。それじゃあよく見えねぇだろう」
ディランに言われるままに、性器全体を見せつけるように足を大きく広げる。
「あ、あぁ……」
すぐ目の前にディランがいるからか、一人でやる時よりも遥かに感度が上がっているような気がする。その証拠に乳首はすでに硬く尖り、淫芽も充血して膨らんでいた。
依然として恥ずかしさは残っていたものの、体の芯は熱く火照り秘裂はすでに濡れ始めている。
「はぁ……ん……」
アイヴィーは表情を蕩けさせて艶めいた声を上げた。
愛する男に自慰行為を見られて、こんなに興奮するとは思わなかった。こうして情欲に満ちた赤褐色の瞳を向けられただけで、堰を切ったように淫らな疼きが増してくるのだ。
(おじ様に見られているだけで、こんなに感じてしまうなんて……)
自慰行為がいつになく気持ちよく、愛欲の蜜がとめどなく溢れてくる。
「いい濡れ具合だな。クリトリスもすっかり膨らんで、男の亀頭みたいになっているじゃないか。普段からそうやって弄っていると、でかくなるもんなのか?」
「変なこと……訊かないで……」
具体的な色や形を言葉にされると、再び恥ずかしさが込み上げてくる。
目を潤ませて赤面するアイヴィーを見て、ディランは可笑しそうに笑った。
「いつまで純情ぶっているつもりなんだ? さっきは色っぽい声で俺を呼びながら、愉しそうにやっていたくせによ」
「はぁん!」
アイヴィーの全身がビクンと跳ね上がる。ディランに敏感な突起をつつかれたのだ。
「もう、おじ様ったら。急に触れないで……」
「俺に触られたいから、誘惑するように呼んでいたんじゃないのか?」
「今は……自分でするから……」
言い終えたところでアイヴィーは、墓穴を掘ってしまったことに気付く。
当然ながらディランは、彼女の言葉を聞き逃していなかった。
「へぇ、そんなに俺に見られながらやりたかったのか」
「それは――」
違うと否定したかったが言葉が続かない。
うっかりとはいえ口に出してしまった以上、自らの発言を撤回するのは不可能だろう。
アイヴィーは仕方なく自慰行為を続けることにした。
せわしなく指を動かして乳首や陰核を刺激していると、じっと行為を見入っていたディランが感極まった様子でため息をつく。
「あぁ、ヤバイな……。お前のエロい姿を見ていたら、俺まで勃っちまったよ……」
おそるおそるディランの股間に目を向けると、男根はこちらに狙いを定めるように隆起していた。
(おちんちんが……もうあんなに……)
その雄々しい形に魅了され、アイヴィーは恍惚の笑みを浮かべる。それに伴って、指の動きもだんだんと速まっていく。
程なくして下肢全体に淫靡な疼きが込み上げてきて、彼女は全身を大きく仰け反らせながら大量の淫蜜を噴き出した。
「はぁ……はぁ……」
手淫でここまで強い快感を得たのは初めてだ。
官能の余韻が引いても、花唇や肉芽は淫らに脈打っている。ディランにその様子を見せつけるように、アイヴィーは足を開いた状態で惚けていた。
「俺のものを見ただけでイッちまったのか?」
「あぁッ!」
再び指先で雌芯を撫でられ、アイヴィーは慌てて足を閉じる。
しかしディランは指を抜こうとせず、愛らしい突起を弄り続けていく。
「あ、あぁ……ん……! おじ様……お願いだから、もうやめて……。これ以上、触れられたら……」
あえかな声を上げて懇願するも、淫魔の本能に支配された体は鋭敏に反応し、新たな滴りが溢れ出てくる。
「アイヴィーが嫌だと言っても、クリトリスはもっと触れられたいと訴えているぜ」
ディランは艶めいた声音で、意地悪くささやいてくる。
「ああっ……! い……今、私のこと……名前で呼んで……下さったの……?」
アイヴィーは胸をときめかせながら、喘ぎ混じりの声で尋ねた。
しかし、ディランは彼女の問いには答えず、代わりに己の硬く隆起したものを握らせる。
「あの、おじ様……」
戸惑うアイヴィーをよそに、ディランは艶気のある微笑みを向ける。
「自慰行為を見せてくれた礼に、俺のものを触らせてやるよ。最初は自分でやろうと思ったんだが、やっぱりアイヴィーに触れてほしくなってな」
こちらを魅了するような微笑で要求されては、アイヴィーも嫌だとは言えなくなる。
それから彼女は遠慮がちに、肉棒を上下に擦り上げていった。
手の平に包まれ優しく撫でられている雄茎は、瞬く間に硬さを増して更に屹立する。まるでアイヴィーに触れられるのを待ちわびていたようだ。
続いて亀頭にも指を這わせていく。その刹那、ディランは感じ入った様子で喘ぎ声を漏らした。
アイヴィーの手の中では、男根が脈動してビクビク揺れている。
ディランがこんなにも感じてくれるのが嬉しくてたまらなかった。アイヴィーは愛しさを込めて肉茎全体を撫でさすった。
「ふ……ぅ……」
するとまた、ディランはため息をついて下肢を小刻みに震わせた。
彼のその姿がこの上なく煽情的で、アイヴィーもたまらず感嘆のため息をつく。
鈴口の裏にある太い血管を愛撫すると、亀頭はヒクヒクと淫らに蠢いて先走りを迸らせる。
(あぁ、何て愛らしいの……)
アイヴィーが頬を上気させて見惚れていると、ディランはなぜか苦笑いした。
「こんなグロテスクなものを見て、嬉しそうな顔するなよ」
「グロテスクなんかじゃないわ。おじ様のおちんちんは、猛々しくて魅力的でとても素敵よ」
アイヴィーは慈しむような眼差しで、自身の手の中で存在感を誇張する雄肉を眺めた。
そんな彼女に対し、ディランは驚きを隠せない様子で目を瞠る。
「お前、本気でそう思っているのか……?」
「ええ、もちろんよ。どうしてそんなことを訊くの?」
「い、いや……別に……」
決まりが悪そうなディランの言動に首を傾げつつも、アイヴィーは手を緩めず夢中で扱き続ける。
行為を始めてからまだ数分しか経っていないが、男根は腹部に届きそうなぐらいに勃起し亀頭もパンパンに張り詰めていた。
完全に屹立した剛茎は、アイヴィーの手首と同じぐらいの太さがあり、長さも相当なものであった。
(こんなに大きいおちんちんが、私の中に入ったのね……)
猛々しい巨根で何度も突かれたのを思い出しただけで、アイヴィーの体から甘いフェロモンの香りが発せられる。
その香りが引鉄となったらしく、ディランは全身の筋力を弛緩させて射精した。
「あぁッ!」
欲望の白濁はアイヴィーの手にも付着した。火傷しそうな熱さや濃厚な雄の匂いに、彼女は劣情を掻き立てられてしまう。
「悪ぃな、俺の精液で汚しちまって。ほら、これで拭きな」
ディランからティッシュを受け取ると、アイヴィーは精液を拭き取っていく。
「それにしても、朝からこんなにイケるとは思わなかったぜ。これも淫魔のフェロモンのおかげだろうな」
ディランは満足げに笑うとアイヴィーを体ごと抱き寄せた。
「あの、おじ様……」
彼の熱を感じた途端、胸の鼓動が急激に早まって下腹部の奥が淫らに疼く。淫魔の本能が、このまま抱かれることを望んでいるのだ。
アイヴィーの心情に気付いたのか、ディランは小さく笑うと「今は抱かねぇよ」と言葉を返した。
「その代わり、夜はお前の体をたっぷり味わわせてもらうから、覚悟しときな」
「今夜もまた、私を抱いて下さるの?」
「今夜だけじゃない、毎晩抱いて気持ちよくしてやるよ。お前一人ぐらいなら、この家に居候させてやってもいいと考えていたところだからな」
やや遠回しな言い方だが、そばに置いてくれるということなのだろう。シオンの件で、魔界に帰りたくないと思っていたアイヴィーにとって、ディランの申し出は願ってもないことだった。
「ありがとう、おじ様! 大好きよ!」
アイヴィーは感謝の気持ちを込めて、彼に勢いよく抱きついた。
「……ったく、こういう時だけ積極的になるとは」
ディランは苦笑交じりにつぶやく。
「おじ様、何か言った?」
「いや、何でもない」
アイヴィーの疑問をごまかすように、彼は優しく頭を撫でてくる。
その時、窓にコツンと何かが当たった。
「ちょっと、ディラン! 人を呼びつけておいて、いつまで待たせるつもりよ!」
続いて屋外から、聞き覚えのある女性の声が響き渡る。
「この声は……エイダさん?」
「あいつ、もう来やがったのかよ……」
ディランは忌々しげにつぶやくと、すかさずアイヴィーから離れた。
「とりあえず、お前もシャワー浴びてきな。浴室は階段を下りて左手だ」
「はい」
アイヴィーは返事をするなり、寝室を出て一階へ下りていく。
(今日から私、おじ様と一緒に暮らすのね!)
アイヴィーの心は歓喜に満ち溢れていた。
ディランの真意はわからないが、初恋の男性の元に置いてもらえるのは嬉しい。
唯一、アニエスのことが気がかりであったが、姉ならきっと上手く切り抜けられているだろう。
この時のアイヴィーは喜びのあまり、とても重要なことをすっかり忘れてしまっていた。
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