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「これはまた、ずいぶん買い込んだな……」
アイヴィーが手にしている大量の買い物袋を見て、ディランは呆然とつぶやいた。
「ごめんなさい。色々と見て回っていたら、つい欲しくなってしまって……」
咎められたのだと思い俯いていると、ディランは罰が悪そうに「誤解させてしまったか……」と付け加えた。
「ちょっと驚いただけで、別にアイヴィーを責めたりはしてねぇから。ほら、運んでやるから貸しな」
「いえ、これぐらいなら大丈夫よ」
「運んでやるって言っているんだから、素直に言うこと聞いておけよ」
遠慮するアイヴィーをよそに、ディランは買い物袋を強引に奪い取り部屋へ運んでいく。
つい先日まで冷たい態度を取っていた彼が、急に優しく接してくるものだからアイヴィーは呆気に取られるばかりである。
それはエイダも同じだったようで、ディランに奇異の眼差しを向けていた。
「女に優しくするディランって、何だか妙に気味が悪いんだけど」
「エイダにそう言われるとすごくムカつくぜ」
昼間の時と同じように、ディランとエイダは憎まれ口を叩き合う。
(喧嘩するほど仲が良いって言葉があるけど……)
果たしてこの二人はどうなのだろうと、疑問を抱かずにはいられなかった。
「それじゃあ、今度こそあたしは帰るよ。暇な時にまた店に顔を出してね」
エイダは軽く手を振りながら颯爽と帰っていく。
二人きりになったところで、何の前触れもなくディランに抱き寄せられた。
「あっ……」
彼の方から抱きしめてもらえたことで、アイヴィーの心はこの上ない喜びで満たされていく。
「今日は変な男に捕まらなかったか?」
「大丈夫よ、エイダさんがずっと一緒だったから」
「それなら良かった……」
ディランは安堵した様子でつぶやいた。
「私のこと、心配してくれていたのね。ありがとう、おじ様」
アイヴィーは感謝の言葉と共に、愛らしい微笑みを向ける。
その直後、ディランの顔が近づいてきて強引に唇を奪われた。
「ふっ……うぅ……ん……」
突然のことに驚きつつも、アイヴィーは逃げることなく従順に、彼の口づけを受け入れる。
毎晩こうしてディランに求められては、巧みな愛撫と灼熱の楔で何度も快感を与えられるのだろう。
想像しただけで甘い陶酔が込み上げてきて、まだ触れられてもいないのに足の間がジンと疼く。
(あぁ、早くおじ様に抱かれたい……)
心の中で強くそう願った瞬間、アイヴィーの体がふわりと宙に浮いた。ディランに抱き上げられたのだ。
愛する男にお姫様抱っこされたことで、彼女の胸の高鳴りは最高潮まで到達する。
「どういうわけか、今すぐお前を抱きたくてたまらないんだ。このままベッドへ連れて行くが構わないな?」
「もちろんよ! 私もおじ様に抱かれたくてたまらかったの!」
待ちに待った瞬間が訪れる歓びから、アイヴィーは目を煌かせてディランに強くしがみつく。
「さすがは淫魔、俺をその気にさせるのが上手いな」
彼は独り言のようにつぶやいたのち、アイヴィーを抱きかかえて寝室へ向かう。
ディランの言葉の意味はわからなかったが、今はそんなことなどどうでもよかった。
「おじ様、大好きよ」
これから始まる甘美な時間に思いを馳せて、アイヴィーは愛の言葉をささやいた。
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