第四章 ~開花する淫蕩の血~

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「これはまた、ずいぶん買い込んだな……」  アイヴィーが手にしている大量の買い物袋を見て、ディランは呆然とつぶやいた。 「ごめんなさい。色々と見て回っていたら、つい欲しくなってしまって……」  咎められたのだと思い俯いていると、ディランは罰が悪そうに「誤解させてしまったか……」と付け加えた。 「ちょっと驚いただけで、別にアイヴィーを責めたりはしてねぇから。ほら、運んでやるから貸しな」 「いえ、これぐらいなら大丈夫よ」 「運んでやるって言っているんだから、素直に言うこと聞いておけよ」  遠慮するアイヴィーをよそに、ディランは買い物袋を強引に奪い取り部屋へ運んでいく。  つい先日まで冷たい態度を取っていた彼が、急に優しく接してくるものだからアイヴィーは呆気に取られるばかりである。  それはエイダも同じだったようで、ディランに奇異の眼差しを向けていた。 「女に優しくするディランって、何だか妙に気味が悪いんだけど」 「エイダにそう言われるとすごくムカつくぜ」  昼間の時と同じように、ディランとエイダは憎まれ口を叩き合う。 (喧嘩するほど仲が良いって言葉があるけど……)  果たしてこの二人はどうなのだろうと、疑問を抱かずにはいられなかった。 「それじゃあ、今度こそあたしは帰るよ。暇な時にまた店に顔を出してね」  エイダは軽く手を振りながら颯爽と帰っていく。  二人きりになったところで、何の前触れもなくディランに抱き寄せられた。 「あっ……」  彼の方から抱きしめてもらえたことで、アイヴィーの心はこの上ない喜びで満たされていく。 「今日は変な男に捕まらなかったか?」 「大丈夫よ、エイダさんがずっと一緒だったから」 「それなら良かった……」  ディランは安堵した様子でつぶやいた。 「私のこと、心配してくれていたのね。ありがとう、おじ様」  アイヴィーは感謝の言葉と共に、愛らしい微笑みを向ける。  その直後、ディランの顔が近づいてきて強引に唇を奪われた。 「ふっ……うぅ……ん……」  突然のことに驚きつつも、アイヴィーは逃げることなく従順に、彼の口づけを受け入れる。  毎晩こうしてディランに求められては、巧みな愛撫と灼熱の楔で何度も快感を与えられるのだろう。  想像しただけで甘い陶酔が込み上げてきて、まだ触れられてもいないのに足の間がジンと疼く。 (あぁ、早くおじ様に抱かれたい……)  心の中で強くそう願った瞬間、アイヴィーの体がふわりと宙に浮いた。ディランに抱き上げられたのだ。  愛する男にお姫様抱っこされたことで、彼女の胸の高鳴りは最高潮まで到達する。 「どういうわけか、今すぐお前を抱きたくてたまらないんだ。このままベッドへ連れて行くが構わないな?」 「もちろんよ! 私もおじ様に抱かれたくてたまらかったの!」  待ちに待った瞬間が訪れる歓びから、アイヴィーは目を煌かせてディランに強くしがみつく。 「さすがは淫魔、俺をその気にさせるのが上手いな」  彼は独り言のようにつぶやいたのち、アイヴィーを抱きかかえて寝室へ向かう。  ディランの言葉の意味はわからなかったが、今はそんなことなどどうでもよかった。 「おじ様、大好きよ」  これから始まる甘美な時間に思いを馳せて、アイヴィーは愛の言葉をささやいた。
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