序章

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序章

 ――一体、どうしてこんなことになったのやら……。  幼くして天涯孤独となった日から、誰にも頼らず一人で生きていくつもりでいた。  軍に入隊した時はもちろん、脱退して地方都市に移り住んでからも、その決意は一度も変わらなかった。  張り合いのない質素な生活も、それなりに楽しんでいたのである。  しかしどういうわけか、自らを淫魔と名乗る美少女に好意を抱かれ、なりゆきから彼女を居候させる羽目になってしまった。  それだけに留まらず、その少女に強引に迫られて仕方なく抱くことになった。驚いたことに、その時の彼女はまだ処女だったのだ。  淫魔が処女とか、そんな馬鹿な話があるわけないと思ったが、紛れもない事実である。  本当に、もう何が何だかわけがわからない。  そもそもなぜ自分が気に入られたのか、皆目見当がつかなかった。  こんな四十過ぎの中年男のどこがいいのだろうか。若くていい男など、探せば他にいくらでもいるというのに。  その一方で、淫魔との奇妙な同棲生活も満更でもないと思い始めていた。そればかりか、今夜はどうやって彼女をイカせようかと考えるのが、ここ最近の密かな愉しみになりつつあるのだ。  こうなったのはきっと、彼女の恍惚の笑みや官能的な喘ぎ声、Jカップもあるという豊満なバストに魅了されたせいだろう。 (あんな色っぽい姿で誘惑されたら、こっちにその気がなくともほだされちまうよな)  年甲斐もなくそそられるなど、我ながら何とも情けないとつくづく思う。  だが、美少女が自分の愛撫に喜んでくれるのも、なかなか良い気分である。  だから彼女を追い出すことなく、こうして自分のそばに置いているのだろう。  無論、理由がそれだけでないのは、自分自身が一番よくわかっている。 (何だかんだ言って俺も、彼女に強く惹かれていたってことか)  思えば初めて会ったあの日から、すでに彼女に心を奪われていたに違いない。  ふと気付けば彼女のことばかり考えてしまっているし、自分のいない隙に他の男に寝取られたりしないだろうかと不安さえ抱くこともある。  ただ、飲み仲間があまりにもからかうものだから、ついつまらない意地を張って認めようとしなかったのだろう。  それ以外にも自身の生い立ちを気にして、彼女への想いを断ち切ろうとしていたのもある。  どんな美女を前にしても心を動かされることなどなかった自分が、今では笑ってしまうぐらい愛らしい淫魔に恋焦がれているのだ。  ――こうなったら他の男のことなど考えられないぐらい、彼女を激しく抱いて尽きることなく快感を味わわせてやろう。  そんな良からぬことを企むなど、まるで自分自身が悪魔ではないかと思ってしまうぐらいだ。 (いや、この世に生まれた時からすでに、俺は悪魔みたいなもんだよな)  ならばいっそのこと、このまま悪魔になるのもいいかもしれない。  彼女がずっと自分と一緒にいたいと望むのなら、この魂をいつでも差し出すつもりだ。  今まで想像したことのない未来を想い描きながら、愛する女が待つ寝室へと向かうのだった。
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