第八章 ~蜜月は蕩けるように甘く~

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 濃厚かつ淫靡な情交が終わったのは、昼近くになってからである。  アイヴィーもディランも互いの体を貪っては、数え切れないほど絶頂に果てた。  官能の余韻が引いたのち、二人はようやく車に乗って出発したのだが、街を出る前に急きょランジェリーショップへ立ち寄ることになった。  その際、なぜかディランも一緒に店内に入ってきて、勝手に下着を選んで決めてしまったのだ。しかも全部、セクシーなデザインのものばかりである。 「あと、お前にはこれも似合うんじゃないのか?」  そう言ってディランが指定したのは、薄紅色のベビードールだった。  だが、丈がやたら短い上にシースルーの生地でできており、体の大部分が露出するデザインになっている。  実際に試着してみると、下肢全体が丸見えになっており、乳輪もわずかにはみ出てしまっていた。  煽情的なアイヴィーの姿を見て、ディランは満足げに微笑む。 「俺の見立て通りだな。よし、これも買っていくか。今夜からこれを着て寝ろよ」 「ま、毎晩……これを着なきゃいけないの……?」 「別に構わないだろう。どうせお前は俺としか寝ないんだからよ」  契りを交わしてから、ディランの性癖がおかしくなっているような気がする。  数日前に二人で水着を買いに行った際も、マイクロビキニという際どいデザインのものを買わされたのだ。  普段着については今のところ何も言われていないが、そのうち露出度の高いものを着るのを強要されるのではないかと気が気でない。  買い物を終えてようやく出発し、車に揺られること数時間。旅先に着いたのは完全に日が暮れた頃である。  本来であれば正午には到着していた筈なのだが、思いがけず情交に耽っていた上に寄り道もしたので、予定より遅くなってしまったのだ。 「悪かったな。俺が抱いたりしなければ、もっと早く着く予定だったんだが」 「ううん、いいの。私もおじ様に抱いてもらって、とても幸せだったから」 「おいおい。そんな嬉しいこと言われたら、襲いたくなっちまうだろう」  ディランは心底嬉しそうな笑顔で、人目を憚らずアイヴィーを抱きしめてくる。 「ちょっとおじ様、周りの人が見ているわ……」  場所を問わず愛情表現をしてくるディランに困惑しつつも、その一方では彼と一緒になれて良かったと改めて実感するのだった。  宿泊先のホテルにチェックインを済ませたのち、二人は海辺にあるカフェレストランへ夕食を食べに行った。 「今夜は最高だな」  テラス席から海を眺めながら、ディランは陶然とつぶやく。  彼がこんなにも上機嫌なのは、ワインを飲んでいるからというのもあるだろうが、一番の理由は隣の席に誰もいないからだろう。  自分達が座ってすぐに男性客が二人来たのだが、ディランが「俺の女に色目使ったら殺す」とばかりに睨みつけたので、顔を真っ青にして帰ってしまったのだ。 (他の男性に口説かれても、おじ様への愛は変わらないのに……)  独占欲まで強くなってしまったディランに辟易するが、気を取り直して食事を楽しむことにした。  注文した料理はどれも絶品だったが、中でも心惹かれたのはミルキィキャラメルパフェというスイーツである。 「美味しそう……」  甘いもの好きにはたまらない逸品だった。  しばらくメニューを眺めたのち、アイヴィーは媚びるような眼差しをディランに向ける。 「ねぇ、おじ様。これ……頼んでもいい?」  案の定、ディランは呆れ顔を浮かべる。 「お前も少しは懲りろよ。それ以上でかくなって、服まで買い直す羽目になったらどうするんだ?」 「でも、どうしてもこれが食べたいの。ねぇ、今日だけはいいでしょう?」 「駄目だ、しばらく甘いものは禁止だって言っただろう」 「そんな……」  どうしてもパフェを食べたいアイヴィーだが、ディランも頑なな性格なのでそう簡単に折れてくれるとは思えない。  何か妙案はないだろうかと考えていると、前にアニエスが言っていたことを思い出す。 (気持ちよくしてあげると言えば、おじ様もきっと許可してくれるんじゃないかしら……)  淫魔とはいえまだ羞恥心は抜けていないが、パフェを食べるためならどんな淫らなことでもするつもりだ。 「おじ様、ちょっと……いい?」 「ん? 何だよ?」  訝しむディランにアイヴィーはあることを耳打ちする。  それを聞いた彼は、口の端をわずかに吊り上げてほくそ笑んだ。 「……その言葉、本当だな?」 「ホテルに戻ったら……必ずするわ……」 「それじゃあ、取引成立だな。頼んでいいぜ」  彼の人の悪い笑みを見た瞬間、とんでもない取引を持ちかけてしまった気がして、やはり言うべきではなかったと後悔するアイヴィーだった。
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