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「あはは、何やってるんだよ、舞。お前おもしろいなあ」
兄が、目をパチパチさせながら笑った。
「僕はグレープもらうからな」
ひょいと、紫色の液体の袋を奪った。
「ここで食べよう。ガイコツパーティーならぬ、アイスパーティーだ」
理科室のドアにもたれ、袋の端を口でちぎって、翼は袋ごと口にくわえる。
舞もそれを真似て、袋を口に近づけた。
「あ、ああ、ベトベトになっちゃった」
溶けたアイスは、舞の指をつたい、廊下を濡らした。
「ああ、下手くそだなあ」
翼は笑いながら、器用に袋の中身をじゅうじゅう吸った。
雨が、屋根を打つ音が響いてくる。
窓ガラスが、吹きつける風でカタカタと鳴る。
続いてポーンというピアノの音。
「あ、ベートーベン」
「風の音だろ」
兄は、ペロリと指を舐めて立ち上がった。
「お母さんのとこ、戻ってみるか」
「うん」
「今日のこと、お母さんには、秘密だからな」
「うん」
舞も、親指を舐めてみる。
甘ったるいオレンジの味が舌に残った。
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