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2 いやいや、そんなキャラじゃなかったよね?
ー肌汚い子無理なんだよねー。無理なんだよねー。無理なんだ…-
とぼとぼ家までの道を歩きながらもずっと、推しの言葉が頭の中を占めていた。そういえば昔はこんな肌荒れ酷くはなかった気がする。
いつの間にか言い訳をして、何も改善の努力をしていなかった。
そもそも誰かに見せる努力をしてきた顔じゃない。ちゃんとフルで化粧したのっていつ以来だっけ…?
頭の中でぐるぐる思考を巡らせていると、不意に携帯が着信を告げた。
中学時代によくつるんでいた同級生。堂島春斗の名前が表示されている。
あぁ、そういえば好きなキャラと苗字が同じだった。
本人はよく言ってぽっちゃりな体型で…推しとは程遠かったけど。
好きな漫画が同じで気の合うオタク仲間だった。別の高校に行ってからは連絡も途絶えたまま今まで過ごしていたのに。何だろうと思う気持ちと、昔を懐かしむ気持ちが混じって、落ちていた気持ちが少しだけ弾んだ。
「はい、立花です」
『もしもーし、あかりちゃん?』
「そうだよ、久しぶりだね。春斗」
『さっきまでさ、中学の部活仲間と飲んでてー。あかりちゃんも地元にいるって聞いたから、都合良かったら今から会えないかと思ってー』
…何か違和感。私が知っている春斗とは随分喋り方が違う気がした。
もっとぼそぼそ喋る子だったのに。まぁ会ってない時間が長いから、キャラも変わったのかもしれないけど…
このまま自分の部屋に戻っても鬱々と夜を過ごし、そのまま暗い週末を迎えるだけだろう。懐かしい同級生と話していたら気持ちも晴れるかもしれない。
それに春斗は陰キャだった。会ったら楽になれそうだ。
「いいよ、どこに向かえばいい?」
『じゃあ、駅前の呑み倒れ 白兵衛にいるから来てよー』
昔からあるちょっと小汚いが味は良い地元で有名な居酒屋だ。
誘われたのが洒落たバーとかでないのに春斗らしいとちょっと笑って。
胸を弾ませた。
「あと10分で行ける」
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